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マンション火災の原因から復旧方法まで、管理組合が取るべき対策を解説

国土交通省によると、全国にあるマンションのストック戸数は約675万3,000戸(令和2年末時点)。国民の1割強に当たる、約1,573万人が住んでいると推計されています。こうした多くの入居者の生命と財産を守るために、マンションの管理組合はさまざまなリスクに備えておくことが必要です。本記事では代表的なリスクのひとつである火災について、その原因から取るべき対策、火災になったあとの復旧方法まで、管理組合が押さえておきたいポイントをお伝えします。

マンション火災の件数

消防庁が公表している「令和2年度版 消防白書」によると、2019年の建物火災は2万1,003件。約半分の1万784件が住宅火災で、その3割強の3,327件が共同住宅の火災です。

「共同住宅」の定義には木造アパートも含まれるため断定はできませんが、全国では1日当たり最大10件弱のマンション火災が発生していると考えてよいでしょう。

マンション火災の原因

原因の1位は調理用ガス機器からの出火

では、マンション火災には、どのような原因が多いのでしょうか。東京消防庁が公表している「令和3年度 火災の実態」によると、令和2年に同庁管内で起きた共同住宅の火災(989件)原因の上位3つは以下のとおりです。

  1. ガステーブル等:257件
  2. たばこ:152件
  3. 放火:108件

1位の「ガステーブル等」はガスコンロを中心としたキッチンまわりのことで、調理中の火災が最も多いと考えられる結果になりました。次に多いのが「たばこ」で、火の不始末や寝たばこといった不注意も、火災につながるリスクが高いことが分かります。対策が難しいのが3位の「放火」です。ちなみに消防庁によると、放火は1977年以降の毎年、2019年を除いては建物火災を含むすべての火災原因の1位となっています。

電気機器による火災も

4位は「電気ストーブ」で、5位以下にも「コード」「コンセント」「電気コンロ」「差し込みプラグ」など、電気機器関係の火災原因が目立ちます。

電気ストーブについては、東京消防庁の調査ではストーブ火災全体の76%を占めているという結果に。布団が電気ストーブに接触して出火した事例のほか、電気ストーブの前面10cm以内では接触しなくても物が発火するという可能性も指摘されています。

火を使わない電気製品は火災と無関係なイメージを持たれがちですが、熱を発します。したがって、オール電化マンションでも火災のリスクはあるのです。

マンション火災による被害

マンションが火災で受ける被害として最初に思い浮かぶのが、熱による建物の損傷でしょう。しかし、深刻な被害はそれだけではありません。

煙による被害

建物火災の死因で最も多いのが、煙による一酸化炭素中毒・窒息です。消防庁によると、その割合は38.5%で、火傷(34.2%)を上回っています。

被害として記憶に新しいところでは、2019年7月に京都で起きたアニメーション制作会社の火災(放火・死者36名)があります。この火災では1階で出火してから約30秒で2階と3階まで煙がまわり、最上階の3階では27人中20人が亡くなるという痛ましい惨事になりました。煙が上階に充満するスピードの速さと煙の怖さを知らしめた事例として受け止め、マンションにおいても同様のリスクを考えておく必要があるでしょう。

→ 煙のリスクについては、こちら の記事で詳しく解説しています。

火災臭やダイオキシンによる被害

気付きにくいポイントかもしれませんが、火災臭(鎮火後に残る臭い)のリスクも考えておく必要があります。

火災臭は自然分解されにくい成分を含んでおり、普通に換気を行うだけでは消えるまで2~3年かかると言われています。また、プラスチックが低温で燃えた場合には、健康被害をもたらすダイオキシンが発生します。

火災の程度によっては近隣数十メートル先まで火災臭が届くこともあり、近所迷惑の原因にもなります。

→ 火災による健康被害については、こちら の記事で詳しく解説しています。

火災になったらどう対応するか

火災原因の中には放火もあり、入居者がいくら注意をしても100%未然に防ぐのは困難です。したがってマンション管理組合は、「火災が起きる」ことを前提に対策を考えておく必要があります。

BCPを活用した対策

マンション火災の対策に当たって、参考にしたいのがBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)です。これは、災害や事故が起こっても被害を最小限に抑えつつ、早期復旧につなげるための計画を意味しています。本来は企業や自治体が防災の柱として取り組むものですが、そのエッセンスはマンションの火災対策にも応用可能です。

具体的には、次のような4段階でBCPを策定するとよいでしょう。

  1. 火災によって、どのような被害を受けるのかをイメージする
  2. 1.のイメージをもとに事前対策を打つ
  3. 火災になった場合の指揮系統や責任者を決める
  4. 火災になったら、3.で決めた指揮系統にのっとり対応する

大まかな流れを説明しましょう。

  1. では冒頭に紹介した消防庁や自治体などの資料をもとに、起こり得る火災の被害を想定します。
  2. では入居者の避難訓練や消防用設備の点検を行い、火災になった場合にスムーズな対応ができるよう備えます。
  3. の責任者は、防火管理者が担います。消防法によって「収容人数が50人以上の共同住宅」は防火管理者の選任が定められているので、管理組合で確認をしておきましょう。防火管理者は入居者がなるケースが一般的でしたが、近年はなり手が少なく外部のコンサルタント会社などに委託をするケースも見られます。
  4. の対応方法については、多くの自治体が「初期対応の3原則」として、以下の3つを掲げています。
    • 周囲に火災の発生を知らせ、119番で消防に通報
    • 初期消火にあたる
    • 速やかに避難する

まずは119番通報を行うのが鉄則です。消防が到着するまでは初期消火にあたりますが、火の勢いが激しく身の危険を感じたら迷わずに避難しましょう。

→ BCPについては、こちら の記事で詳しく解説しています。

鎮火後の対応

鎮火後はマンション管理会社を通して、火災復旧の専門会社や塗装業者、エレベーター会社などに復旧を依頼します。

火災復旧の専門会社であるベルフォアジャパンは、すすや火災臭を除去する専門的な技術やノウハウを有しています。その内容について、当社が実際に復旧作業を担当させていただいた事例を動画でご紹介いたします。管理会社様、管理組合の理事長のインタビューも交え、当社がマンション火災の際に行う調査や復旧作業について、分かりやすくお伝えしています。

以下のリンクからぜひご覧ください。

RC造マンションの火災事例」(近日公開予定)

→ 火災の事前対策や発生後の対応については、こちら の記事で詳しく解説しています。

入居者一人ひとりの意識向上を

マンション火災の対策で大切なポイントは、防火管理者ひとりに負担がかかるのを避け、入居者の理解と協力を得ることです。特に入居者が防火管理者の場合は火災対策のプロではなく、管理組合がサポートをしてもできることが限られるからです。そのために日ごろからの周知や避難訓練を通して、入居者の火災に対する意識を高めておく必要があります。

例えば、京都市消防局は先に紹介したアニメーション制作会社の火災を受けて、詳細な対応手順を記した「火災から命を守る避難の指針」を策定しました。こうしたツールを活用して、啓発を行いましょう。また、鎮火後の復旧には、火災復旧の専門会社との連携も考えておくとよいでしょう。

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