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電気火災とは? その原因や種類から予防のポイントまでを解説

工場をはじめとする建物火災の原因で、意外に多いのが電気関係です。こうした電気関係が原因で発生する「電気火災」は、主に設備の維持管理が正しくなされていないために発生するものと、機器を使用している際に発生するものがあります。本記事では、前者の維持管理不適に関係する「トラッキング」や「ショート」などについて、その原因や対策方法についてお伝えします。正しい知識を持って対策を行えば、電気火災を防止するのは決して難しいことではありません。

電気火災の件数と原因

東京消防庁がまとめた「令和3年版火災の実態」によると、同庁管内で令和2年に発生した火災は3,694件。火災自体は全体的に減少傾向にあり、昭和35(1960)年からの約60年間でもっとも少ない件数となりました。その一方で、電気設備機器による火災は増加傾向にあり、令和2年の発生件数は1,163件でした。では、具体的にどのような原因が多いのか、上位は以下のような結果となりました。

  •  維持管理不適:460件
  • 取扱方法不良:287件
  • 取扱位置不適:60件
  • 設置(取付)工事方法不良:52件

以下、「構造機構不良・改悪」(45件)などが続きますが、点検不足をはじめとするヒューマンエラーによる原因が大部分を占めることがわかります。つまり、多くの電気火災は設備の点検や清掃を適切に行えば未然に防げる可能性が高いのです。

本記事では主に、1位の「維持管理不適」について解説していきます。電気機器の使用時に発生する火災や、工場火災全般についての解説は、『工場火災の原因や対策方法から、起きてしまったあとの復旧方法までを解説』の記事をご参照ください。

電気火災の種類

維持管理不適による電気火災の原因には、いくつかの種類があります。

トラッキング

コンセントに差したプラグから出火する現象です。プラグの差し刃にほこりやゴミが溜まって湿気を吸収し、そこに電気を流し続けると小さなスパークが繰り返し発生し、火災につながります。

トラッキング現象は機器の不使用時や電源をOFFにしていても、コンセントにプラグが差さっていれば発生します。一番の予防方法は、使用時以外にはプラグを抜くことです。どうしても差しっぱなしにしなければならない場合は、乾いた布で定期的に清掃しましょう。他には、トラッキング防止加工がほどこされたプラグや、ほこりが溜まるのを防ぐカバーで覆う方法もあります。

ショート(短絡)

断線したコードに電気が流れ、出火する現象です。コードはビニールによって絶縁された銅線を組み合わせてできていますが、この絶縁部分が何らかの原因で破損し、銅線同士が直接接触すると火災につながります。

コードが什器や家具の下敷きになったり、釘やステップルで壁や床に打ち付けられたりすると、絶縁部分が破損してショートが起きるリスクが高まります。絶縁部分が劣化した古いコードや、許容電流が少ないコードを使い続けることも危険です。機器を新しく入れ替える際には、コードも合わせて新品に交換するとよいでしょう。

漏電

ショートと同じく、絶縁部分の劣化によって起きる現象です。劣化した部分から電気が漏れ、熱が発生し、近くにある可燃物に燃え移ることで火災につながります。他には、雨漏りや結露、不十分な工事、機器の故障や老朽化も漏電の原因となります。未然に防ぐには、漏電ブレーカーやアース線の設置といった対策や、定期的な点検・清掃を行うことが大切です。

接続部のゆるみ

コンセントへのプラグの差し込みが不十分であったり、接続部が変形していたりすると火災になります。常に接続部がしっかり差し込まれているか、変形していいないかを確認しましょう。

電気火災の予防方法

東京消防庁は、コンセント・プラグ・コードの火災予防方法として9つのポイントを挙げています。

  1. プラグを抜く際は、コードでなくプラグ本体を持つ。
  2. 差込みプラグにゆるみがないかを点検する。
  3. コードが家具などの下敷きになり、傷つかないよう注意する。
  4. コードを束ねたり、ねじれたまま使用したりしない。
  5. コードが加熱される場所での使用をやめる。
  6. コードのステップル止めをやめる(コードが圧迫され漏電のリスクが高まるため)。
  7. コンセントやコードが使用できる電気量の上限を確認する。
  8. 心線同士をねじり合わせて直接つなぐのを避ける。
  9. コード短絡保護機能が付いた分電盤を設置する。

以上は家庭部門も含めた予防方法ですが、工場をはじめとする事業所においても基本は変わりません。いずれも当たり前な取り組みですが、日頃から当たり前のルールを守ることが、電気火災の予防には大切です。こうした基本をおろそかにしない意識を、朝礼などの機会を用いて日頃から従業員に周知するとよいでしょう。

火災対策にBCP策定を

これまで説明してきた通り、電気火災は基本的な取り組みさえ欠かさなければ未然に予防できる可能性が高いものです。しかしながら、放火といった不測の事態もあるため、万が一、火災が起きてしまった場合の対応策を考えておきましょう。

そこでカギになるのが、BCP(事業継続計画)の策定です。BCPとは、被災時にも中核となる事業を継続し、早期復旧につなげるための一連のフローを具体化した計画のことです。企業や自治体が地震や自然災害への対策として行うケースが多いのですが、工場の火災対策にも十分に応用可能です。

BCPは大きく分けて2段階からなります。事前の計画策定と、火災発生後の復旧プロセスです。事前の計画策定では、火災のリスクを洗い出します。ここでコードの配線やコンセント周りの点検を行えば、トラッキングやショートを未然に防げる可能性が高まるでしょう。復旧プロセスでの取り組みには消防への通報、初期消火、避難誘導などがあります。これらの手順をあらかじめ決めておくことが、迅速な対応や鎮火につながります。

→ 初期消火についてはこちらの記事もご覧ください。『初期消火とは? 工場やオフィス火災の被害を最小限に抑えるためのポイントを解説 』

早期復旧に向けては、復旧専門会社の活用も考えておくとよいでしょう。復旧専門会社は、すすや消火剤で汚染された設備を復旧する技術をはじめ、多くの専門的なノウハウを有しています。こうしたプロにアウトソーシングすることで、事業再開までの期間を大幅に短縮することが可能です。

→ BCPの詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。『BCP対策とは?企業防災との関係から策定方法、早期復旧のフローまで』

電気火災対策を経営基盤の強化に

電気火災は、基本的な点検や清掃さえ怠らなければ未然に防げるものです。電気設備が多岐にわたり配線の数も多い工場では、対策に手間がかかるかもしれません。しかし、対策を怠ったために火災になってしまえば、サプラーチェーンに悪影響を及ぼし、最悪の場合は倒産という事態になりかねません。中小企業の経営を取り巻く状況は、大きく変わっています。特に近年は「カーボンニュートラル(脱炭素)」をはじめとする時代の流れを受けて、再生可能エネルギーの導入や省エネタイプの設備への入れ替えを検討している企業も多いことでしょう。こうした取り組みとともに電気火災対策も強化すれば、より安定した経営基盤を実現できるはずです。

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