日本列島は毎年のように水害に見舞われています。特に近年は「極端現象」と呼ばれる大規模な台風や豪雨の発生が目立ち、企業は対策を求められています。この記事では、水害の種類や発生の原因から、水害を取り巻く現状、想定される被害と対策方法、早期復旧に向けた取り組みまで、水害対策に必読の情報を紹介します。
水害とは何か?
水害とは、どのような状況のことをいうのでしょうか。国立環境研究所は以下のように定義しています。 「自然現象により陸地が浸水し、住居、農地、工場や生活インフラが影響を受けて、人命・健康や資産に及ぼす被害のこと」
水害の種類
水害には主に、以下の4種類があります。
- 洪水:台風や豪雨によって起きる氾濫(はんらん)のこと
- 土砂災害:台風や豪雨によって山腹や川底の土砂が押し流される現象
- 高潮:台風によって海面の水位が上昇し、海水が陸地に流れ込む現象
- 津波:地震によって海底面が上下することで、波が広がっていく現象
氾濫の種類
水害に関連してよく耳にする言葉「氾濫」は、気象庁によると2種類に分けられます。
- 外水氾濫:河川の水位が上昇し、堤防から水があふれ出ること
- 内水氾濫:下水道や排水路で処理しきれない水があふれ出ること
近年は豪雨に見舞われた都市部での内水氾濫が目立っており「都市型水害」とも呼ばれています。これまで都市型水害といえば、排水機能が不十分な開発途上国での発生が一般的でしたが、近年は日本の都市においても珍しくなくなりました。
水害の原因
場所や地域を問わず、都市部や山間部などで水害が増えています。その主な原因は台風と豪雨で、特に2010年以降は発生頻度が増加しています。
近年の主な大型台風
- 2015年8月:平成27年台風15号
- 2018年9月:平成30年台風21号
- 2018年9月~10月:平成30年台風24号
- 2019年9月:令和元年房総半島台風(台風15号)
- 2019年10月:令和元年東日本台風(台風19号)
→ 台風の事例や対策方法の詳細は、こちらの記事をご参照ください。(「企業や工場が台風対策を実施する重要性と防災のポイント」)
近年の主な豪雨
2014年8月:平成26年8月豪雨(広島土砂災害)
2018年6月~7月:平成30年7月豪雨
2020年7月:令和2年7月豪雨
→ 豪雨の事例や対策方法の詳細は、こちらの記事をご参照ください。「予測が難しい豪雨。企業が取るべき対策とは?」
水害と同様に頻発する地震についても、東日本大震災を上回る規模の南海トラフ巨大地震の発生が危惧されており、沿岸部を中心に津波への警戒が求められます。
水害が増えている理由
近年における水害の傾向として顕著なのが「極端現象」の頻発です。これは「数十年に一度の台風」や「記録的な豪雨」と呼ばれていた現象が、毎年のように発生していることを意味します。
その原因は地球規模で進んでいる気候変動にあり、2021年8月に公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書」もこの事実を指摘しています。また、同報告書は今回はじめて、気候変動の要因が人間の活動(経済活動や移動にともなう温室効果ガスの排出)にあることを明記しました。
水害による被害と対策方法
では、水害によって企業はどのような被害を受けるのでしょうか。想定される被害と主な対策方法を、一般財団法人国土技術研究センターの「企業等における事業継続のための水害対応版BCPの取組について」をもとに紹介しましょう。同センターは近年の情勢を受け「水害対応版BCP」の研究に取り組んでいます。
- 従業員の逃げ遅れ → 気象情報などの情報収集、避難ルートの確保や避難誘導体制の確立など
- 社屋や工場の浸水 → 土嚢(どのう)の準備、止水板や防水扉の設置、設備のかさ上げなど
- IT機器の浸水によるデータ消失 → データの上階保管、クラウド上への保存など
- 危険物の流出による二次災害 → 配管の弁やマンホールの閉鎖、危険物の高所移動など
- 電気設備の浸水による停電 → 非常用電源や自家発電機の導入、配電盤や受電設備の高所設置
上記のほか、深刻な影響をもたらす被害に「臭い」が挙げられます。また、対策についても上記のほかに多くの方法があります。詳しくは以下の記事をご参照ください。
「水害で気づきにくい被害のひとつ、「臭い」の原因と除去するための方法」
「水害発生!工場・オフィスの浸水対策と被災後の早期事業再開のポイント」
被災後の早期復旧
水害による被害を最小限に食い止める対策と並び重要なのが、被災した後の早期復旧計画です。特に製造業や運輸業の場合、早期に操業を再開することは自社のメリットだけでなく、サプライチェーンや取引先の損失を最小限に押さえることにつながります。
早期復旧を目指すために中心的な取り組みとなるのが、BCPです。BCPとは「Business Continuity Plan」の略で「事業継続計画」と訳されます。BCPを策定する目的は以下の2点です。
- 被災によって物的・人的な資源が限られた状況でも、中核となる事業を継続すること
- できる限り短い期間で、通常の操業ベルまで復旧させること
BCPの策定は、決められた手順どおりに行えば、けっして難しいことではありません。ここでは中小企業庁が示す、5つの策定手順を紹介しましょう。
- 「何のためにBCPを行うか」目的を明確にし、基本方針を立案する
- 「被災時も優先して提供したい商品・サービスは何か」中核事業を洗い出す
- 「具体的に自社はどのような被害を受けるのか」被災の状況をイメージする
- イメージをもとに「人、物、情報、金」の4分野で事前対策を打つ
- BCPを発動するフローをつくり、指揮系統や責任者を決める
→ BCPの基礎知識や策定手順の詳細は、こちらの記事をご参照ください。「BCP対策とは?企業防災との関係から策定方法、早期復旧のフローまで」
また、水害を想定したBCPの策定では、自社が位置する地域の特性を知り、どのような被害を受ける可能性があるかをイメージしておくことが大切です。国土交通省が運用する以下の2サイトを参考に、情報収集を行うとよいでしょう。
- ハザードマップ:近くにある水害のリスクを洗い出せる
- 浸水ナビ:浸水した場合の状況をシミュレーションできる
「極端現象」に備えて着実な水害対策を
地球規模で起こっている気候変動によって、極端現象と呼ばれる大規模な水害が地域を問わず発生しています。対策として、気候変動を引き起こす温室効果ガスの排出量を抑える取り組みは大切です。すでに太陽光や風力をはじめとする再生可能エネルギーの導入や、EV(電気自動車)への転換を実施して、気候変動対策に取り組んでいる企業も多いでしょう。それと同時に、今後も頻発することが予測される水害に備えて対策を講じることが、いまや必要不可欠になりました。
建物や製造設備、倉庫などが浸水の被害に遭えば、早期復旧の大きな障壁になります。そこでぜひ検討しておくとよいのは、災害復旧会社の活用です。災害復旧会社は、浸水の被害を受けた設備を修復する専門的な技術を有しています。専門業者を活用すれば、設備を丸ごと交換するよりも短期間で事業を再開できる可能性が高まります。BCPを策定する際には、ぜひご検討ください。
弊社が実際に行った、浸水被害に遭った段ボール製造工場での復旧作業について、動画でご確認いただけます。精密洗浄のような、復旧専門の企業としてのノウハウを活用した具体的な作業内容についても紹介しておりますので、以下のリンクからぜひご覧ください。