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企業防災とは?今まさに必要な理由から取り組みのポイントまでを解説

企業防災とは、災害時の被害を最小限に食い止め、早期復旧につなげるために企業が行う取り組みのことです。大規模な風水害が頻発し、巨大地震の発生も危惧(きぐ)される現在、自社の復旧だけでなく、国や地域のレジリエンス(災害に対する強靭性)という観点からも、企業防災の重要性が増しています。この記事では、企業防災の概要、取り組む意義、取り組みのポイントなどを、近年の情勢とともに解説します。

企業防災の概要

「企業防災」といっても漠然としてイメージしづらいかもしれません。内閣府は2つのアプローチによって4つの役割を果たすものと定義しています。

2つのアプローチ

  • 被害を最小限に食い止める「防災」
  • 早期復旧を目指す「事業継続」

4つの役割

  • 生命の安全確保
  • 二次災害の防止
  • 事業の継続
  • 地域貢献・地域との共生

これらはいずれも大切な取り組みであり、どれかひとつだけを行えばよいものではありません。2つのアプローチである「防災」と「事業継続」は車の両輪のように密接に関係しており、4つの役割も相互に重なり合う部分があるため、総合的に考える必要があります。

「災害対策」や「BCP」との関係

2つのアプローチを具体的な取り組みに落とし込んだのが「災害対策」と「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」です。それぞれ以下のように説明されます。

  • 「防災」を担う「災害対策」:目的は従業員の身体や生命の安全確保と、物的被害の軽減です。避難路の確保、建物の耐震性強化、設備の浸水対策などがこれに当たります。
  • 「事業継続」を担う「BCP」:目的は早期復旧です。災害によって物的・人的資源が制約を受けるなか、どの事業を優先して継続し、どのくらいの期間で、どのくらいのレベルまで復旧させるかの計画を意味します。

つまり、災害対策によって被害を最小限に食い止めることで、BCPによる早期復旧が可能になり、両者一体で取り組むことで4つの役割を果たせるという関係です。

BCPの詳細についてはこちらの記事をご参照ください。

なお、BCPの一環としてDRP(災害復旧計画)と呼ばれる取り組みがあります。詳細はこちらをご参照ください。

企業防災が必要な理由

東京商工リサーチの調査によると、2011年3月に発生した東日本大震災による関連倒産は累計1,979件(2021年3月31日現在)に達しました。近い将来には、東日本大震災を上回る被害が想定される南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生も危惧されています。

また、近年は気候変動により風水害も頻発しています。なかでも、2018年9月に発生した「平成30年台風21号」の被害は甚大で、保険金支払い総額は1兆678億円と、東日本大震災(約1兆3千億円)の支払い総額に迫る額となりました。

災害発生が日常的なできごととなり、企業生命を左右する重大なリスクとなった現在、大企業であろうと中小企業であろうと、企業防災は必要不可欠な取り組みなのです。

企業防災における企業の責任

法律的な側面においても、企業防災の位置付けは重要です。「防災基本計画」と「労働契約法」との関係について見てみましょう。

国の防災政策の中核をなす「防災基本計画」は、企業防災の推進について以下のように記しています。

企業は、災害時に企業の果たす役割(生命の安全確保、二次災害の防止、事業の継続、地域貢献・地域との共生)を十分に認識し、自らの自然災害リスクを把握するとともに、リスクに応じた、リスクコントロールとリスクファイナンスの組み合わせによるリスクマネジメントの実施に努めるものとする。(第2編第1章第3節より)

まず、4つの役割を強調し、リスクマネジメントの具体策として災害対策やBCPの策定、必要な資金やライフラインの準備に取り組むよう呼びかけているのです。

一方、「労働契約法」は、以下のように定めています。

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。(第5条)

同法は、使用者(企業)と労働者の間で守られるべき基本的なルールを定めた法律として、2008年に施行されました。したがって、企業は防災政策の一翼を担うとともに、従業員の生命と安全を確保する責任を負っているのです。

企業防災でおさえておきたいポイント

企業防災の策定は、先に述べた「災害対策とBCPを一体的に策定する」と言い換えることができます。

災害対策とBCPの策定方法

まず、災害対策として避難路の確保、建物の耐震性強化などを行います。その際には国土交通省のハザードマップを参考にするとよいでしょう。近くに河川があれば浸水、斜面があれば崖崩れというように自社が受ける被害をイメージしやすくなり、より具体的な対策を立てやすくなります。

→ 浸水対策の詳細については、こちらの記事をご参照ください。

また、災害時は従業員が帰宅困難者になることも予想されます。飲料水、食料、非常用持ち出し袋、発電機などの物資も準備しておきましょう。

一方のBCPは、以下5つの手順にしたがって策定します。

  1. 基本方針の立案
  2. 重要商品の検討
  3. 被害状況の確認
  4. 事前対策の実施
  5. 緊急時の体制の整備

これら策定手順の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。

企業防災の策定には経営者、防災担当者、設備担当者の連携が欠かせません。これに加えて、すべての従業員に対し、マニュアルの周知や訓練を通して企業防災の意義を伝え、災害が発生しても迅速に対応できるチームワークを築いておくことも大切です。

企業防災に活用できる保険と災害復旧専門会社

災害時の早期復旧には、保険の活用も有効です。もっとも一般的なのが火災保険で、すでに加入している企業も多いでしょう。しかし、建物の建て替えや設備の再調達は補償されるものの、事業が中断している間の運転資金は補償されないといったように、適用範囲があるので注意が必要です。

こうしたケースを含む事業中断リスクに広く対応する保険商品もあるので、現在加入している保険の補償内容をいま一度見直しておきましょう。

あわせて、災害復旧専門会社の活用も検討したいところです。災害復旧会社は専門的な技術を用いて、浸水や火災でダメージを受けた設備を修復するため、復旧までの時間とコストを大幅に削減できる可能性が高まります。

社会の一員という視点から企業防災を推進

国はリスクマネジメントの方向性として「国土強靭化」(ナショナル・レジリエンス)を掲げています。レジリエンスには「強くてしなやか」という意味があり、災害を「しなやか」に受け止めて速やかに回復する国土づくりを通して、国民の生命と財産を守り抜くとしています。

企業が国土強靭化に寄与することは、顧客や取引先ひいては地域の安心につながります。もとより企業には公共性の担い手という一面があり、企業防災の策定は「自社の社会的使命は何か?」を問い直す機会でもあります。社会の一員という視点から、企業防災に取り組んではいかがでしょうか。

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