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工場火災の原因から対策方法から、起きてしまったあとの復旧方法までを解説

工場の火災は、さまざまな局面で深刻な影響をもたらします。例えば、設備の焼失による操業停止、煙やすすによる従業員の健康被害、近隣への迷惑、取引先やサプライチェーンに与える損害などが考えられます。特に中小企業の場合、これらが同時に発生すれば自社の存亡に関わる問題になりかねません。そこで工場火災の原因から、火災になったらどう対応するかまで、対策方法をお伝えします。

工場火災の件数

消防庁が公表している「令和2年版 消防白書」によると、2019年の工場・作業所の火災は1,803件。全国で、1日当たり5件弱の工場火災が起きていたことになります。

なお、消防法によると「工場・作業所」の定義は、以下のとおりです。

  • 工場とは、物の製造又は加工を主として行うところで、その機械化が比較的高いものをいう
  • 作業所とは、物の製造又は加工を主として行うところで、その機械化が比較的低いものをいう(消防同意に関する指導指針より)

この定義にもとづき、本記事では工場と作業所を合わせて「工場」とします。

工場火災の原因

では、工場火災には、どのような原因が多いのでしょうか。東京消防庁が毎年公表している「火災の実態」によると、同庁管内では年間60〜90件の工場火災が発生しています。そして火災原因の半分強を占めるのが「電気設備・器具等」です。直近3年間の件数を見てみましょう。

  • 2020年:64件中35件
  • 2019年:85件中46件
  • 2018年:90件中53件

上記いずれの年も電気設備・器具等による原因が、「ガス・石油器具」や「原因不明」(いずれも毎年10件程度)を大きく上回る結果になりました。

一例として、「電気溶接器の溶接作業中に火花が飛び、周囲の段ボールに着火」した事例が報告されています。ほかにも、コンデンサ(低圧)、充電式電池、研磨機、裁断機など、さまざまな電気設備・器具が出火原因となることが分かっています。

特に、老朽化した低圧進相コンデンサによる火災は6月ごろから9月ごろにかけて多発しており、東京消防庁は注意を呼びかけています。

そのほかの原因として注目すべきが「放火」で、消防庁によると1977年以降の毎年、2019年を除いては建物火災を含むすべての火災原因の1位となっています。

工場火災がもたらす影響

工場火災は、社会に大きな影響を及ぼすことがあります。2020年10月と2021年3月には、2つの半導体工場で火災が発生。これら2件の工場から半導体の供給を受けていた自動車メーカーや家電メーカーは、生産調整に追い込まれました。

これは大手企業の事例ですが、工場火災が取引先やサプライチェーンに莫大な損失を及ぼすリスクがあることは、中小企業も認識しておきたいポイントです。

→ 工場火災がもたらすその他のリスクについては、こちら の記事で詳しく解説しています。

火災になったらどう対応するか

初動から鎮火後までの対応

では、火災になった場合、どのような対応を取るべきなのでしょうか。中小企業庁は「中小企業BCP策定運用方針」において、5つのポイントを挙げています。

  1. 「発見」「初期消火」「通報」をワンセットで行う
  2. 「消防への通報」と「周辺住民への通報」は役割を分担して行う
  3. 状況によっては初期消火を中止し、避難を優先する
  4. 延焼の危険性を考えて、周辺住民への通報は必ず行う
  5. 鎮火後は消防の検分を受け、間違いなく鎮火したことを確認する

BCPを策定しておく

上記5つのポイントを実行するために必要なのが、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)です。BCPとはリスクを事前に想定し、対策を行うことで被害を最小限に食い止め、早期復旧につなげる計画のこと。企業や自治体が行う防災対策の柱として、震災や自然災害が多発する近年ますます重要な取り組みになっています。

具体的にどのようにBCPを策定し、実行に移せばよいのかについては、本サイトで別途詳しく解説した記事を公開しています。

→ BCPの具体的な策定方法については、こちら の記事で詳しく解説しています。

BCPの有無で大きく変わるシナリオ

では、BCP策定の有無でどのような違いが出るのでしょうか。中小企業庁の「BCPの有無による緊急時対応シナリオ例」からポイントを抜粋して、比較してみましょう。ここでは「自動車用部品等のプレスメーカーで夜間、工場の通用口付近で不審火による出火があった」場合を想定しています。

<BCPなし>

  1. 周辺住民が火災を発見して119番通報
  2. 深夜になって消防署から社長宅に連絡
  3. 取引先には「商品納期の目処が立たない」と答えるのみ
  4. データの復旧に数週間を要する
  5. 復旧後も受注は戻らず、会社の規模を縮小し従業員を解雇

<BCPあり>

  1. 周辺住民が119番通報したあとに、社長宅にも連絡。日ごろから住民との関係を築いていたため、迅速に連絡を取れた
  2. 社長と会社幹部が火災現場に駆け付け、取引先への連絡や周辺住民への対応を行う
  3. 取引先に復旧の目処を連絡。自社設備が稼働しない間は協力会社に代替生産を要請
  4. データのバックアップを取っていたので、すぐに復旧
  5. 復旧費用は保険でカバーし、会社の規模縮小も従業員の解雇もなし

このようにBCPを策定しておけば、火災が発生してもスムーズに対応でき、被害を抑えたうえで早期復旧できる可能性が高まります。逆にBCPを策定せず「いざとなれば何とかなるだろう」では対応が後手に回って時間を浪費てしまい、会社の存亡に関わるリスクが高まります。

鎮火後の建物・設備の早期復旧

鎮火後は一刻も早く被災箇所を調査し、早期事業再開に向けて復旧プランを立てる必要があります。特にすすや臭い(火災臭)は通常の清掃では完全に除去できない可能性があり、そのままにしておくと健康被害の恐れがあります。また、設備はすす汚染により腐食が急激に進行するため、早急な汚染対策も必要です。

これらの復旧対応には専門的な技術や経験が必要なので、復旧専門会社にアウトソーシングするのが良いでしょう。

ベルフォアジャパンは工場火災の復旧について、以下のような技術・手法を有しています。

  • すすや消火剤で汚染された設備を被災前の状態に戻す
  • 電子部品や電子機器のすす汚染やさびを、特殊な洗浄剤によって除去
  • 壁や天井のすすを特殊フィルムによって除去
  • 残存する火災臭をオゾン脱臭によって除去
  • 汚染物質をドライアイスで冷却して除去

ベルフォアジャパンは被災状況にあわせてこれらの技術を組み合わせ、同時に行うことで、最短での事業再開をお手伝いします。

→ 火災による煙の危険性については、こちら の記事で詳しく解説しています。

当たり前の積み重ねで工場火災への備えを

工場火災の対策について紹介してきました。なかでも必要不可欠な取り組みとなるBCPについては、大企業が大がかりに行うイメージが強いかもしれません。しかし、中小企業でもできることから始めていけば十分に実施が可能です。例えば、以下のような取り組みもBCPの一環です。

  • 電気溶接器の近くに可燃物を置かないよう、日ごろから整理整頓を徹底する
  • 放火のリスクを避けるために、燃えやすいものを外に置かない
  • 周辺住民や取引先とコミュニケーションを取っておく
  • 火災の危険性と対策の大切さを、従業員全員で共有する
  • 鎮火後の早期復旧に向けて、復旧専門会社を活用する

このように「当たり前のことを当たり前に積み重ねること」が、火災に対する備えになると言えるでしょう。

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