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BCP対策とは?企業防災との関係から策定方法、早期復旧のフローまで

BCP対策とは、災害によって被害を受けても、中核となる事業を継続し、早期復旧を目指すための対策を行うことです。2011年3月に発生した東日本大震災を機に、BCP 対策の重要性があらためて認識され、現在は企業の規模や業種を問わず、必要不可欠な取り組みになっています。この記事では、BCP対策の基礎知識、策定の手順、被災から早期復旧までのBCP発動フローを解説します。

BCP対策とは?

BCP対策を行う目的

BCPとは「Business Continuity Plan」の略称で、「事業継続計画」と訳されます。BCP対策を行う目的は、大きく分けて以下のふたつです。

  1. 被災した状況でも、中核となる事業を継続すること
  2. できる限り短い期間で、通常の操業レベルまで復旧させること

水害や火災、地震などにより被災すると、平常時と同じ水準で操業することは困難です。建物や設備が被害を受け、物的・人的な資源が限られた状況で、優先して行うべき事業に注力し、早期復旧につなげなければなりません。この一連のフローを具体化する計画がBCPです。

特に製造業や運送業は、サプライチェーンや取引先の損失を最小限に押さえるためにもBCP対策が重要になります。対策を講じてステークホルダー(取引先や顧客)の安心を確保できれば、「危機管理がしっかりした会社」として信頼性が高まり、自社の企業価値向上にもつながります。

いいかえれば、BCP対策を行っていない場合は被災時に打つ手がなく、操業が滞ることで最悪の場合は倒産のリスクさえ考えられるのです。

企業防災におけるBCP対策の位置付け

BCP対策は「企業防災」の一環として行います。内閣府は企業防災を以下ふたつのアプローチに分けており、BCP対策は2番目に位置づけられています。

  1. 防災:避難路の確保、建物の耐震性や耐水性の強化などを通して、従業員の身体や生命の安全確保と、物的被害の軽減を図る(災害対策)
  2. 事業継続:被災後も事業を継続し、できる限り短期間で、高い操業レベルまで復旧させる(BCP対策)

企業防災では、災害対策を立てて被害を最小限に押さえる準備をしておくことで、BCPによる早期復旧が可能になります。企業防災という一連の取り組みのなかで、両者は車の両輪のような関係にあるのです。

→ 企業防災の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。「企業防災とは?今まさに必要な理由から取り組みのポイントまでを解説」

BCM、DRPとの関係

BCP対策に関連した取り組みとして、BCMと DRPがあります。これらは混同されることが多いのですが、以下のような違いがあります。

  • BCM(事業継続マネジメント):BCPを効果的に運用するためのマネジメント活動のことです。BCP対策に必要な予算の確保、社内への浸透、計画の見直しなどがBCM です。
  • DRP(災害復旧計画):生産ライン、倉庫などの設備や、ITシステムの復旧計画のことです。事業継続に設備が重要なウェイトを占めている業種には、重要な取り組みになります。

つまり、BCMによるマネジメントがあってはじめてBCP対策が可能になり、DRPを綿密に準備しておくことがBCP対策による早期復旧につながります。BCP、BCM、DRPは相互に補完しあう関係にあり、総合的に取り組むことで効果を期待できるのです。

→ BCMの詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。「BCPとは?災害対策との違いから運用方法まで分かりやすく解説」

→ DRPの詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。「DRPとは?BCPとの関係から策定方法まで必要なポイントを解説」

BCP対策が必要な理由

2011年3月に発生した東日本大震災以降、日本では大きな自然災害が頻発するようになりました。特に台風や豪雨による水害は毎年のように発生しています。これらのリスクに備え企業が生き残るためにも、BCP対策の重要性が高まっているのです。

巨大地震のリスク

株式会社東京商工リサーチの調査によると、東日本大震災からの10年間で、震災による関連倒産は1,979件(2021年3月31日時点)に達しました。近い将来には、東日本大震災を上回る被害が想定される、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生が危惧されています。

水害のリスク

気候変動の影響により「極端現象」と呼ばれる大規模な台風や豪雨による水害が多発しています。気象庁の調査によると、1時間降水量50ミリ 以上の平均年間発生回数は2011〜2020年の10年間で約334回でした。統計を開始した過去の10年間(1976〜85年の約226回)の約1.5倍に増加しています。

→ 水害対策の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。(「水害対策とは?水害の種類や原因から、想定される被害、早期復旧の方法まで」)

火災のリスク

自然災害ではありませんが、身近なリスクとして火災も想定しておく必要があります。総務省・消防庁の調査によると、年間37,683件(2019年)の火災が発生しており、1日あたりで換算すると約103件にのぼります。

→ 火災対策の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。「企業や工場で行っておくべき火災対策のポイントを解説」

BCP対策5段階の策定手順

BCP対策を具体化するために重要なのは、策定手順です。一例として、中小企業庁が公開する『中小企業BCP策定運用指針・第2版』より、5つのステップからなる策定手順を紹介しましょう。

  1. 「何のためにBCPを行うか」目的を明確にし、基本方針を立案する
  2. 「被災時も優先して提供したい商品・サービスは何か」中核事業を洗い出す
  3. 「具体的に自社はどのような被害を受けるのか」被災の状況をイメージする
  4. イメージをもとに「人、物、情報、金」の4分野で事前対策を打つ
  5. BCPを発動するフローをつくり、指揮系統や責任者を決める

特に、BCP対策の目的を定め中核事業を洗い出すプロセスは、経営方針と大きく関係します。そのためBCPの策定は防災担当者レベルでなく、代表者がリーダーシップをとり全社的に取り組むことが重要です。

→ 各策定手順の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。「BCPとは?具体的な策定手順と策定時のポイントを解説」

BCP対策4段階の復旧プロセス

では災害が発生したら、どのようにしてBCP対策を発動するのでしょうか。ここでは中小企業庁が定める「BCP発動フロー」をもとに、4段階の復旧プロセスを紹介しましょう。

  1. 初動対応(被災当日)
    • 二次災害の防止措置:応急処置、初期消火、警察・消防への通報など
    • 従業員の参集:自社に集まることが可能な従業員を集める
    • 安否・被災状況の把握:従業員や顧客と家族の安否確認、事業所の被災状況を把握する
  2. 中核事業の実施体制確立(被災当日)
    • BCP対策で策定した計画をもとに、事業継続の方針を立案し体制をつくる
    • 指揮系統、対策本部となる拠点を確保する
    • 取引先や顧客に被災状況を報告、同時に保険会社に連絡をとる
    • 地域貢献活動:可能であれば、自治体やNPOなどと協力し、地域の復旧協力を始める
  3. 中核事業を継続(翌日以降)
    • 顧客・協力会社向け対策:他社の設備を借りた生産、納品スケジュールの調整を行う
    • 従業員・事業資源対策:被災した従業員への生活支援、建物や設備の復旧措置などを行う。自社単独での早期復旧が難しい場合は、災害復旧会社をはじめ外部のサービスを利用する
    • 財務対策:運転資金や早期復旧に向けた資金を確保する
  4. 災害復興(収束時)
    • 事態の進展・収束状況に合わせ、各対策を進める
    • 責任者の判断でBCPを解除する

BCP対策にはパートナーシップも大切!

以上、BCP対策の目的や必要な背景、策定から実施の手順について紹介しました。BCP対策は自社の早期復旧を実現するだけでなく、サプライチェーンの維持やステークホルダー(顧客や取引先)の安心も確保します。また、国や自治体が取り組んでいるレジリエンス強化(災害に対する強靭な国・地域づくり)への貢献にもつながります。

有効なBCP対策を策定するためには、業界団体や同業他社とパートナーシップを組むことも大切です。自社単独での早期復旧が難しい場合は、他社の設備を借りての生産や、材料調達先の多重化などが考えられます。このとき、パートナーシップの一環として考えておきたいのが、災害復旧会社の活用です。水害や火災で被害を受けた設備の修復を専門に行う技術を持つ災害復旧会社にアウトソーシングすれば、復旧までの時間を大幅に短縮できる可能性が高まります。BCP対策の実効性を上げるためにも、ぜひご検討ください。

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